安乗崎

仲秋の紀伊半島、三灯台はしご旅(1)

季節は真逆ですが、南半球のではなく日本国内の旅。23年9月。夏の厳しい暑さも多少なりとも和らいで、秋の気配を感じる頃。コツコツと続けている参観灯台巡りで今年(2023年)の春は北東北。それならば、9月と10月の3連休があるので、どちらかで秋は未開だった紀伊半島の三灯台をまとめてまわりたい。そんなことで、春同様、天気次第で行くか行かぬか天秤状態だったものの、天気も崩れない予報だったので、思い立ったが吉日。9月の連休に決行することに。単騎、2泊3日。仲秋の紀伊半島、三灯台はしご旅。主に三重の1日目です。

浜松SA、安濃SA

今回も渋滞を避けるため、丑三つ時に出発し、闇の中、東名(E1)、新東名(E1A)とを走りやってきました浜松サービスエリア。朝5時30分頃、連休初日の朝、車や人は多いようです。浜松が楽器の街だけあって、所々に音楽に関するものが散りばめられています。建物の壁面の鍵盤柄はちょっと違うような…。

空が明るくなるとともに、お腹が空いてきたので、早朝から営業していた売店で朝おでん&おむずびを購入し腹ごしらえ。煮たまごと共にだし巻き卵?のおでんが珍しくて追加、たまご多めになってます。

浜松サービスエリアを出発し、伊勢を目指します。伊勢湾岸自動車道(E1A)で名古屋付近をショートカットし、渋滞に巻き込まれながらも、湾岸中島IC手前からはスムーズに。四日市JCTで東名阪自動車道、伊勢自動車道(E23)と進み、安濃SAで小休憩。朝方は涼しかったものの、8時になると汗ばむ感じで、どうやら夏の陽気となりそうです。

しばらく緩いカーブを繰り返す単調な道が続き、勢和多気JCTを過ぎると、伊勢志摩まではもう少し。伊勢が近くなると不思議な標識が目に入ってきました。

伊勢バリア!?

スピリチュアル的なものか、伊勢神宮の聖域的なものかと思いましたが、どうやら料金所(検札所)のことだそうで。

そんなバリアを何事もなく通過し、伊勢二見鳥羽ラインを引き続き走り、朝熊東ICでバイパスを降りました。そこから、二見浦駅近くを抜けて、国道42号線(旧道?)のトンネルを抜けたところにあった駐車スペースにバイクを停めて、徒歩で夫婦岩を目指します。

夫婦岩(二見興玉神社)

駐車スペースの道路を挟んで向かい側。商業施設「伊勢夫婦岩ショッピングプラザ」と小さな水族館「伊勢シーパラダイス」があり、海の生き物の鳴き声がどこからともなく聞こえてきます。時間は9時過ぎ、オープンしたてで人もまばらな館内を通り抜けて、海沿いをてくてく、鳥居が見えてきました。

二見興玉神社の東鳥居をくぐってすぐ、左手にあった海の守護神を祀る龍宮社を参拝。龍宮社は元々、別の場所にあったお社が昭和13年に遷され、それ以来、この場所で海の安全を見守っているそうです。

龍宮社を参拝後、岩場に作られた参道を進んで行くと、見えてきました海に浮かぶ夫婦岩が。
伊勢神宮は三度ほど訪れてきましたが、夫婦岩に来るのは初めてです。
夫婦岩のある二見興玉神社は伊勢神宮への参拝前に訪れる禊ぎの場として知られ、神社名にもある興玉、神様が寄り付く岩とされる「興玉神石」が沖合にはがあり、過去の地震により地盤が沈下し、今は海中にあるそうです。二ノ鳥居まで進み、戻りながら参拝していきます。

二見興玉神社の御祭神は猿田彦大神。その御使いとされる蛙の姿を手水舎をはじめ、所々に見ることができます。海沿いにまとまった社務所やどっしりと構えた拝殿。旅の無事を願いつつ、参拝を済ませ御朱印を頂き、改めて夫婦岩を近くに望みながら、来た道を戻りました。

龍宮社の前を通り、再び伊勢夫婦岩ショッピングプラザを抜けて駐車スペースへ。今回の旅の目的地その①、安乗埼灯台に向けて国道42号線を鳥羽方面へ。前回付近を訪れた際は伊良湖港からフェリーで上陸しましたが、今回は鳥羽駅、フェリー乗り場の前まで陸を走ってやってきました。

まだ正午前、鳥羽の港を通り越し、このペースならば順調に本日の終点、紀伊勝浦まで行けそうです。それにしても、日差しが強く、なおかつ暑い。小まめな水分補給が必要になってきました。もう少し穏やかな天気を期待していたのですが…。

道の駅 伊勢志摩、志摩市観光農園

国道167号線、近鉄志摩線と並走する区間は若干の峠道。県道61号線穴川付近で道の駅の案内があったので、灯台の前に少し寄り道。新し目のバイパス道(国道167号線)を少し進んだ先、小高い丘の上にあったのが道の駅 伊勢志摩です。駅舎?の隣にはサンアール磯部という場外馬券売り場が併設された珍しい道の駅ですが、真夏の陽気の中では空調の効いたオアシス。ショッピングなどしながら涼を取りました。

地図を見ると道の駅の奥に更に施設があるようで、せっかくなので立ち寄ってみます。志摩市観光農園。天気が良すぎるせいか、駐車場には車の姿がほぼありません。涼を取って早々で何ですが、入口の自動販売機で水分を調達し、入園料を支払い園内へ。

名称開館時間休館日所要時間入場料
志摩市観光農園展示内容による展示内容による30分程度300円

花の季節に合わせて開園しているそうで、コキアが見頃だそうです。赤いイメージのあるコキアですが、今の季節ははまぶしいくらいの鮮やかなグリーン。傾斜地一面に植えられており、その畑に入ることができ、間近で観賞することができます。園内には植栽のほか、電話ボックスやベンチなどのオブジェが所々に設置されており、映える写真が撮れそうです。

ただ、日当たりが良すぎて…。屋根がある休憩場所があれば尚可でした。

安乗埼灯台

朝方から色々と立ち寄って来ましたが、そろそろ今回の旅の目的地その①、安乗埼灯台へ。灯台に近くなるにつれ、道路なのか防波堤の上なのか、微妙な道に。自動車だとすれ違い不可の狭い上り坂を進んでいくと、駐車スペースに到着です。

近くにあった案内看板。お目当ての灯台は突き当りにあるようです。休憩舎の脇を抜けると草原が広がり、頭上には青空が。今までとは一風変わった形状の灯台が見えてきました。

四角い!?

伊勢志摩国立公園内に位置し、ぐるり風光明媚な景色が広がっていますが、湾内には暗礁が多い海の難所。そのため、明治6年、この安乗崎に日本の灯台建築ではおなじみ、リチャード・ヘンリー・ブライトンの指導により木造の八角形の灯台が設置され、海に安全を見守ってきたそうです。ただ、海食により灯台の建つ地盤が崩れ始めたため、昭和23年8月、現在の位置に新たに鉄筋コンクリート造の四角い灯台が建てられました。なお、役目を終えた旧灯台は船の科学館(東京都品川区)に移築されたそうです。

名称参観時間休観日所要時間参観料
安乗埼灯台平日9:00~16:00、土休日9:00~16:30(3~10月)
9:00~16:00(11~2月)
15~30分程度300円

円筒でなくても螺旋というのか考えながら、広めで比較的のぼりやすい階段を上がっていきます。コンクリむき出しの平らな階段壁面には灯台からの眺めを撮った写真やのぼれる灯台スタンプラリーの案内。のぼりきったところ、レンズの格納部屋は他の灯台同様の円筒状ですが、外に出ると四角形の踊り場がやはり特徴的です。

円形で無い分、踊り場でのすれ違いが容易で、広々としています。高いところにいる開放感、天気も良く、波も穏やかで、暑さが気にならなければ飽きない景色。ただ、台風シーズン、嵐のときは豹変するのでしょう。波による侵食を防ぐため外洋側の岸壁の一部は補強されていました。

日陰が恋しいので、ぐるっと眺めて降りることに。

灯台を後にし、空調の効いた休憩舎へ。建物内はカフェスペースになっており、お茶などの飲み物のほか、お芋スイーツが提供されています。そろそろ昼食の時間ですが、アイスコーヒーと数量限定のスイーツでティータイム。海を眺めながらひと休みできました。

十分に涼んだところで、次の灯台、大王埼灯台を目指します。

大王埼灯台

目的地その②の大王埼灯台。複数の灯台を同じ日に参観時間内に制覇するのは距離&時間的に難しいですが、志摩半島には参観灯台がとても近い範囲に存在するため、今回は記事のタイトルの通り、灯台見学のはしごも可能。と言うことで、続けてやってきました。

こちらは港情緒であふれており、ちょうどお祭り(わらじ祭り)の期間中だったようで、港周辺は賑わっています。灯台への徒歩ルート手前の駐車場にバイクを停めて、歩いて灯台まで。安乗埼灯台で涼んだものの、ここまでたどり着くまでにすでに汗だくで…。ペットボトル片手に風情のある路地を通って行きます。途中で灯台守にご挨拶。

名称参観時間休観日所要時間参観料
大王埼灯台平日9:00~16:00、土休日9:00~16:30(3~10月)
9:00~16:00(11~2月)
15~30分程度300円

灯台周辺(岬先端)は広場になっており、写真スポットが用意されています。港での行われていたお祭りに関係のある、一つ目一本足の巨人「ダイダラボッチ」の顔出しパネルが設置され、近くには少々色褪せた歓迎大王埼灯台の看板。まるでスポットライトのような日差しにダイダラボッチが両手を上げてひなたぼっこをしているようでシュールです。二人目のダイダラボッチになる前に灯台受付で参観料を支払い、足早に日陰へ。灯台の構成物として扇型の付属舎があり、まるで船橋(せんきょう)のような姿。受付側にある入口の螺旋階段を上がっていきます。いざ、ブリッジへ!

大王崎は志摩半島の南東端に位置し、遠州灘と熊野灘の荒波を二分するように突出しており、こちらも安乗崎同様、海の難所とのこと。そのため、大正時代に起こった海難事故をきっかけとして、先の安乗埼灯台より遅れた昭和2年10月に設置、初点灯。第二次世界大戦での損傷、伊勢湾台風などを乗り越えて昭和53年に大改修を受け現在に至っているそうです。

灯台からは港町が一望でき、太平洋に近いため大小さまざまな船が行き来し、安乗﨑灯台とはまた違った景色を楽しめます。吹き抜ける風が涼しい付属舎では灯台を擬人化したキャラクターが笑顔?で出迎えてくれました。

天の岩戸

夕食付きで予約したお宿のチェックイン時間もあるので、徐々に紀伊半島を南下し始めます。大王埼灯台を出発し、ナビに従い、国道260号線、167号線、昼前に訪れた道の駅 伊勢志摩近くを通り過ぎて県道32号線(伊勢道路)へ。少し北上しているようですが、自動車専用道路経由のほうが時短のようです。右手にダム湖(神路ダム)を望んで少し先、気になる小さな鳥居が見えたので、進路を変えて鳥居の先に。ダム湖沿いを奥へと進んでいき、二之鳥居を過ぎてすぐのところに駐車場がありました。

天の岩戸(恵利原の水穴)は古事記に記される神話、天照大神が須佐之男命を戒めるために岩戸に隠れてしまう伝説の洞窟で、伝説の地は日本各地にあるようです。看板によると、ここから先は徒歩となるようです。周辺の観光案内に並んで、散策コースの紹介があり、岩戸までは片道400mほどあるようです。すべてを巡ると1時間以上要しそうな距離。先を考えると時間的に危ういので、名水百選にも選定されている、脇を流れる神路川のせせらぎを観賞して元来た道を戻ることにしました。

県道32号線、伊勢神宮(内宮)近く、2022年の新年に訪れた猿田彦神社の前を通り、伊勢西ICより伊勢自動車(E32)を使い、和歌山(新宮)方面を目指します。勢和多気JCTで紀勢自動車道(E42)へと進路を変え、那智勝浦ICまで最短ルートで走り抜けます。

道の駅 みかんパーク七里御浜

紀勢自動車道(E42)は尾鷲北ICまで、そこから先は断片的に自動車専用道が存在し、将来的には紀伊半島の周囲をなぞるように繋がるようです。途中、走りっぱなしで単調になってきたので、雨が多いと有名な尾鷲の街中を青空の下、一般道を尾鷲南ICまで。熊野尾鷲道路(E42)で終点の熊野大泊IC、そこからは国道42号線で海沿いを進みます。途中、日本書紀にも記される日本最古の神社、花窟神社や世界遺産「花の窟」の脇を通ったものの時間的にスルーしてしまいました…。その代わりに少し先にある、阿田和駅近くにある、道の駅 みかんパーク七里御浜に到着です。

道の駅の売店には和歌山名物の梅干しや瓶入りジュース、お菓子などのお土産が並んでいます。また、柑橘類のほか地場の農産物も売られています。施設内には柑橘類をメインとしたジュースバーがあり、試飲セットがあったのでせとか、セミノール、サマーフレッシュの3品種を注文。疲れた⁉体に柑橘ジュースの酸味がしみました。さて、お店も閉店のようなので出発です。道の駅から南紀勝浦までは残り僅か。寄り道しなければ余裕をもってお宿に到着できそうです。新宮の街中を抜け、高森ICより再び自動車専用道(那智勝浦新宮道路)で短い間ですが那智勝浦IC、国道42号線を経て、本日のお宿に到着です。

5月の東北旅行に引き続き、チェックイン時間が早いものの夕食付でも温泉も楽しめるプラン。ご当地日本酒を頼んで、バランスの良い食事に舌鼓。夜通し走ってきた疲れがとれそうです。2日目は灯台はしご旅、3つ目の目的地へ。そして、往路とは別の道で北進します。

なお、掲載している情報は旅行当日(2023年9月)のもののため、ご覧いただいた時点では異なる場合がございます。ご旅行の参考とする場合(特に交通機関やイベント等)は事前に確認の上、検討をお願い致します。同地域への旅行を検討されている場合の参考になれば幸いです。

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