尻屋埼灯台

花と緑と春風の北奥羽(3)

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23年5月。大型連休期間の天気予報とにらめっこ。後半(5月3日〜7日)も前寄りであれば東北方面は大きく崩れることはなさそう。天気次第で行くか行かぬか天秤状態だったものの、思い立ったが吉日。宿泊場所の確保の難しい3日、4日のみ宿をおさえ、東北目指したぶらり旅。行き先は大まかに北東北。冬に断念した東北にある未開の上れる灯台とそれ以外、行けそうな場所を距離と所要時間を鑑みずリストアップ。単騎みちのく、2泊3日の北奥羽(北東北)の旅。当初帰路に着くはずだった3日目は当初の最終日。天気が持ちそうなので、引き続き主に青森(下北半島)と時間の許す限り県内を巡り、夜、雨から逃れるように南へ進みます。

3目目(5月5日 金曜日)

5月5日、前夜あらかじめ調達しておいた軽食を取り、一泊お世話になったお宿を出発。北に約100km程の下北半島の尻屋崎を目指します。

三沢は基地の街で、三沢米軍基地のほか航空自衛隊三沢基地もあり、空港は日本で唯一の三者(米軍、自衛隊、民間)利用空港だそうです。街の所々にそれを感じさせる英語表記の看板を見かけるなど若干のアメリカナイズ。しかし、それも少し街を離れると、もとの田畑の広がる田園風景に。国道338号線に出てからは道なりに、ひたすら北を目指します。途中、六ケ所村の沼地地帯や東通の発電所を横に見ながら、東通村の役所街手前で恐山・むつ方面とは別の道へ。

残りの1/5程度でしょうか、県道248号線を北進します。目立って建物ののない森の中を走っていきます。道路からは見えませんでしたが、東側の太平洋沿岸には鳥取砂丘を凌駕する広大な猿ヶ森砂丘が南北に広がっています。防衛省管轄の実験場になっており観光地化はされていませんが…。

続けて県道172号線、県道6号線と進むと、左手に海が見えてきました。そして、これまでの景色がわずかの間、一変。港と採掘工場。それを超えるとすぐに尻屋崎灯台東ゲートに到着です。入口で公園の案内が書かれた紙を受け取り、いざ灯台へ。

灯台の手前にあった広めの駐車場に停めて、徒歩で灯台周辺を散策することに。駐車場にあった観光案内看板。対岸の北海道は別として、改めて青森は大きいです。

尻屋崎、尻屋埼灯台

下北半島国定公園に含まれる、尻屋崎は下北半島の東先端にあり、寒立馬の放牧地としても知られています。一帯は公園となっており冬季は閉鎖、4月~11月の昼に解放されています。

名称開館時間休館日所要時間入場料
尻屋崎公園8:00~15:45(4月)
7:00~16:45(5~11月)
冬季30分程度入場無料
名称参観時間休観日所要時間参観料
尻屋埼灯台9:00~15:00(4月)
9:00~16:00(5~11月)
冬季30分程度300円

駐車場から約300m程度、国内最北端ののぼれる灯台、尻屋埼灯台。これまで巡ってきた灯台の中でも街からかなり離れており、交通の便は決して良いとは言えませんが、

レンガ造り(外観からはわかりにくい…)の白い灯台は、青い空に映えそうですが、雲が多めで少々同化しています。明治9年(1876年)に設置されてから現在まで現役で、入口に設置された銘板がそれを物語っています。

螺旋階段を上がって行く途中にもレンガ造りの一部を見ることができ、レンガ造りで高さ日本一の灯台をのぼりながら体感することができます。灯台参観の際、度々耳にするイギリス人灯台技師ブラントン氏の最後の設計灯台とのことで、歴史が長い分、色々な逸話が存在する灯台のようです。

内部のレンズは更新されているものの、歴史を感じるろう灯。ここから360度見渡せる景色は建造時と比べどれだけ変わったのでしょう。少々霞んでおり、遠くははっきりと見えませんでしたが、5月、東北の長い冬が明けて間もないようで、近くの緑が淡く見えました。

Instagram - “Brick tower“ 「レンガ造りの塔」

ぐるり景色を眺めながら涼んだところで、階段を下り灯台の外へ。そして、岬の地形を感じられそうな近くの灯台東側の原っぱへ。間近で灯台と海を写真に収めるのにはベストな場所です。

時間は11時前頃。今回の旅の主な目的、2つの灯台巡りは達成しましたが、尻屋崎は本州でも最北地の辺り。ルートを変えて戻るにも朝来た方面に戻らなければなりません。計画段階では願わくば北海道…!? と思っていたものの、大間ですら叶わぬ状況。下北半島の名所の多くは巡れそうもありません。

今後の天気と時間的に長居は禁物。下北半島周回はあきらめ、先ずは給油と考えながら、岬を一周するように時計回りで進んでいると昆布を乾している風景はのどかです。そして、その先で発見。

寒立馬

宮崎の都井岬と違って、柵があり間近で対面できませんでしたが、馬たちは放牧されており、日向ぼっこしています。寒い地域で暮らす馬だけあって、毛もふさふさで立派な体格。サラブレッドのような軽やかな身のこなしというよりは名の通り立ち姿が凛々しいです。そして子馬の姿もあり、ほっこり。

寒立馬との対面を済ませ、入場したゲートの脇を通り抜け、県道6号線を戻ります。途中のGSで給油し、むつ尻屋崎ICまで。

むつ市内に入ってすぐの辺りには斗南藩墳墓や史跡地があり、戊辰戦争で会津を追われた旧藩士たちの歴史が刻まれています。そこから間もなく、急に現れた立派な道路(国道279号線、下北半島縦貫道路)を短い区間ですが使って、国道338号線、街の中心部を迂回。県道4号線へと入ると山道になります。

恐山

県道4号線の途中に「霊場恐山」と書かれた立派な門。それをくぐり少しすると、付近が活火山でもあるため、火山ガスの臭いが、そして、荒々しい風景が見えてきました。三途の川を渡り、宇曽利湖の畔にあるのが恐山菩薩寺の駐車場に到着です。

場所は下北半島の真ん中あたり、恐山は慈覚大師(円仁)によって開かれた霊場で、信仰と祈りの場として、現在も多くの人々が訪れる地となっています。

名称開門時間開山期間所要時間入山料
恐山菩提寺6:00~18:005~10月60~120分程度大人 500円
小・中学生 200円

総門を通り左手にあるのが本堂で、イタコの口寄せの看板が立てかけられていました。イタコとは死者の言葉を自らを媒体として伝える者のことで、現代でいうカウンセラー的存在。ただ、携わる者は年々少なくなっているそうです。

正面の山門を抜けると、参道の両脇に寺院にミスマッチな小屋が建っています。建物は湯小屋で全部で4つ(1つは少し離れたところに)あり、泉質は硫黄泉で参拝者は入浴できるそうです。汗を流すために一浴びしたいところですが、タオルを持参する必要があるのと、洗い場が無いそうなので、入浴後に硫黄泉の香りが残るようです。

湯小屋の先、突き当りには地蔵殿。その裏手には山道があり、少しのぼったところに奥の院不動明王。それは高台にあり、途中、境内と宇曽利湖が一望できます。続けて、地獄巡りへ。足元は岩がゴロゴロしており、所々蒸気が上がっています。その近くには硫黄が結晶化おり、お賽銭でしょうか。硬貨が置かれています。ただ、ルートの途中には注意書きの看板も立てられており、長居は禁物のようです。

ぐるりと巡って、宇曽利湖畔の極楽浜。青く輝く水面と白い砂浜がこれまでの風景と異なり天国にたどり着いたかのような景色。積み石に立てられた風車がクルクルとまわっていました。

大湊、横浜町

霊場恐山に1時間ほど滞在し、出発後は途中までは来た道を戻るように進みます。ちょっとの時間と距離ですが、寄り道のため国道338号線との交差点で川内方面へとハンドルを切ってからまもなく、目的の大湊駅に到着です。大湊駅は前日の津軽線の三厩駅同様、半島の終着駅。訪れた時にはちょうど、リゾートあすなろが停車していました。また、列車以外にも、駅前からは釜臥山にある自衛隊のガメラレーダーを見ることができます。

ただ、大湊駅へは三厩駅同様、終着駅ということで下調べ無しで訪れましたが、一つ手前の下北駅が現在の本州最北端の駅とのことで…。大湊駅を出て駅前を通ったものの、スルーしてしまいました。ただ、2001年までは下北交通大畑線が下北駅より北上しており、終着だった大畑駅が最北端だったようです。

下北駅前通過後、県道176号線、国道279号線と陸奥湾の近いところを走り、時々すれ違うバイクとあいさつを交わしながら、のんびりと南下していきます。のどかな田園風景、徐々に菜の花畑が目に付くようになってきました。そして、少し見慣れた地名。

青森の横浜!

国道沿いの道の駅よこはまに到着です。この季節、全力で菜の花を推しているようで、のぼり旗や商品名など、菜の花の文字が並んでいます。海も近く海産品も有名のようです。せっかくなので、菜の花関連商品として、菜の花カレーやシフォンケーキ、海産も前日のしじみだけだったので、ホタテ(少々お安めの)など乾きものを購入。

昼食がまだだったので、地場の名物をと思って屋台へ。おやつの時間くらいだったので、種類が限られており、お腹にたまりそうな焼きそば(普通のソース焼きそば)とホタテ焼きを戻って、バイクのシートに座っていただきました。

ごちそうさまでした!

腹ごしらえの後、国道を走っていると菜の花の香りがヘルメット越しに漂ってきます。ちょうどいい季節に来たようで一面の菜の花畑、走りながら鑑賞し、横浜吹越ICより、下北半島縦貫道路で野辺地ICまで快走。正面に八甲田連峰を見ることができました。

野辺地ICで国道4号線に合流。県道8号線で三沢方面に道なりに進み、姉沼辺りで左へ。米軍関連施設なのか、一部フェンスで囲まれた道を通り抜けていきます。空港施設をぐるりとまわるように進んで、朝ぶりに戻ってきました三沢の街に。三沢はほぼ寝泊まりだけで、観光ができていなかったので…。

青森県立三沢航空科学館

ルート的に三沢には戻ることになっていましたが、時間があればと思っていた航空科学館。なんとか営業時間内に間に合いました。航空科学館は三沢空港に隣接する県の施設で、最初の太平洋無着陸飛行(日本~アメリカ本土)を成功させたミス・ビードル号のレプリカをはじめとした航空機、さらには宇宙に関するものが展示されている科学館です。

名称開館時間休館日所要時間入山料
青森県立三沢航空科学館9:00~17:00月曜日(祝日時は翌日)
12/30~1/1
60~120分程度大人 510円
高校生 300円
中学生以下は無料

入館時点で閉館まで1時間を切っていたため、足早に見学していきます。屋内の有料展示のほか、屋外にも自衛隊機、米軍機などの機体展示(大空ひろば)があり、公園のようになっています。

入館券を購入し展示コーナーへ。さっそく、ミス・ビードル号が出迎えてくれました。建物は航空機を展示するため天井が高く、それを利用したアトラクション的な施設も設置されていました。そのうちの写真にある天井のレールを使う「大空を飛ぼう」は滑空感を味わえそうで楽しそうでしたが、時間に限りがあるので、今回は展示メインで巡ることに。

国産旅客機のYS-11(日本エアコミューター機)などの航空機展示のほか、航空技術などを解説、体感できる展示、さらにはロケットの一部や人工衛星といった宇宙に関する展示まで、幅広く学べる施設です。そして、建物の奥には仕切られた一角。

ホンダジェットの技術実証機を見ることができます!

翼の上にエンジンが乗っている独特なフォルム。YS-11等と比べるとコンパクトですが、最新技術がいっぱいつまっているようで、計器の展示もありました。残念ながら、機内を見ることはできませんが、機体を間近で見学することができる国内唯一の施設だそうです。

足早ながら展示を一通り見終わる頃、館内に閉館を知らせる放送が流れはじめました。飛行機に関するお土産が並ぶ売店で、科学館限定っぽい缶バッチなどを入手し退館。せっかくなので、ミス・ビードル号の離陸地点である淋代海岸に立ち寄ることに。

科学館から程なく、国道338号線の「太平洋無着陸横断飛行発進の地」の看板を目印に折れて、海岸近くの松林を抜けると長く延びる砂浜が見えてきました。海岸には鉄骨造の展望塔(少々武骨ですが)が設置されており、階段を登ると高い位置から太平洋を一望できます。そして、海岸にもミス・ビードル号が設置されており、上から眺めることができます(意外と大きいです)。ただ、朝方と比べて雲も厚くなって、天気予報通り雨が降り出しそうな様子です。

太平洋を望み見た後は、雨雲から逃れるように南へ急ぎます。東京まで直行は堪えそうなので、気仙沼のルートインの予約を取り、雨のリスクが比較的避けられそうな宮城県まで三陸沿岸を進みます。国道338号線、下田百石ICから八戸自動車道(E4A)、八戸JCTで三陸沿岸道路(E45)、沿線は昼間ならば眺めのよさそうなルートですが、日も暮れてしまったので、観光無しで、バイクの燃料と天候をうかがいながら走っていきます。三陸沿岸道路は自動車専用道ながらも無料区間(八戸JCT~鳴瀬奥松島IC)となっており、前回三陸を訪れた際は途切れ途切れとなっていましたが、現在は全通しています。

久慈駅

以前、三陸沿岸を訪れた際(2017年5月)は田老より北は行くことができなかったので、久慈北ICで降りて、駅付近だけですが、朝ドラの舞台にもなった、三陸鉄道の始発駅「久慈」へ。

ほんの寄り道程度の久慈観光。駅前、それと最寄りの道の駅 くじに立ち寄り、閉店間際になってしまいましたが、お土産コーナーを巡ることができました。

まだ、雨はなさそうですが、ここは岩手県北部。お店の明かりも消えてしまったので、早々に休憩を済ませ、久慈ICより三陸沿岸道路で気仙沼を目指します。

宮古

三陸沿岸道路は本線にサービスエリアやガソリンスタンドがなく、沿線の既存店舗や道の駅の利用を推奨しているため、所々で案内表示がなされています。ただ、ガソリンスタンドについては営業時間が気になるので、夜遅くならない時間に、給油は済ませておきたいところ。そんな状況において、燃料の残量が心許なくなったため、給油灯が点る前、街の規模が大きい宮古にて給油することに。宮古中央ICで降り、夜の街を彷徨います。

国道106号線沿いで営業中のスタンドを見つけ給油。ついでに、見かけたことのないお店があったので、自身の給油(夕食)のため「トマト&オニオン宮古店」で夕食を取ることにしました。

時間は21時前。地場のチェーン店かと思ったら、すかいらーくグループ(しかも、西日本のほうが店舗が多い)だったようで。ただ、初めて利用しましたが、ボリュームのあるハンバーグとカレーバーに満足。少々贅沢なディナーになりました。燃料補給を済ませたところで、宿に向けて夜道を行きます。

気仙沼

再び宮古中央ICより三陸沿岸道路へ。満腹で雨もなく、少し肌寒くも快適。と思っていたところ大槌付近で…

降り始めました、雨がポツポツ…

所々にトンネルがあり、多少であればと思っていたものの、シールド上を水滴が次々と転げ落ちていく微妙な雨量。道中でレインコートを着るわけにもいかないので、大船渡ICで降りてすぐのコンビニの駐車場へ避難。ホテルに到着する前にどこかに立ち寄るのも手間なので、飲み物などの買い物を済ませ、レインコート装着。いざ、ラストスパート、陸前高田を通り宮城県(北部)に入り少しして、以前は建設中だった気仙沼湾横断橋を渡り気仙沼中央ICで降りるとまもなくです。

23時過ぎ、気まぐれ旅の宿確保でおなじみになっているホテルルートインに到着。チェックインを済ませ、大浴場でこれまでの疲れを取り、道の駅 よこはまの自販機で買った北東北限定コーヒーでのカフェタイム。これまた長かった3日目も無事終了です。

4目目(5月6日 土曜日)

予定外の4日目は観光無しで東京へ。天気は雨。しかし、福島寄りは晴れで、気温も高いようなので、雨に打たれるのは途中までで済みそうです。宿泊は朝食付きプランにしておいたので、朝はゆっくりの出発となりました。

気仙沼中央ICから三陸沿岸道路で仙台方面へ。南下するにしたがって、雨粒は気にならなくなり、レインコートも乾いていきます。

利府JCTを直進。仙台市内で給油のため高速を降り、その後再び乗ろうとゲートを通ると、初日以来のETCエラー。どうやら電源を取っているリレー回路の調子が悪く電圧が安定しない様子。電圧が安定するまで待って入ったものの、ETCユニットはデリケートなようで。入口のICで再び時間を要してしまいました(ご迷惑をおかけし申し訳ありません)。

仙台若林JCTを直進し、帰路は常磐自動車道(E6)へ。朝、ホテルを出発してから約250kmの四倉PA、帰路の半分を超えたところで13時過ぎ。太陽が顔をのぞかせると気温も急上昇し、まるで初夏の陽気です。福島以南は天候に恵まれていたものの、ETCの不安があるので寄り道は控えて、三郷ICまで高速オンリー。軽く渋滞にはまったものの、安定の常磐自動車道です。三郷ICからは首都高は使わず、一般道をトコトコ走り、18時前に到着、観光無しの予定外の4日目は無事終了しました。2泊3日が3泊4日になった今回の花と緑と春風の北奥羽の旅はおわり。次の旅路へ…

なお、掲載している情報は旅行当日(2023年5月)のもののため、ご覧いただいた時点では異なる場合がございます。ご旅行の参考とする場合(特に交通機関やイベント等)は事前に確認の上、検討をお願い致します。また、感染症の感染状況等により、行動の制限や対策が求められる場合はその指示に従い行動をお願いいたします。その上で、同地域への旅行を検討されている場合の参考になれば幸いです。

1日目(23年5月3日)東京〜角館~男鹿半島…花と緑と春風の北奥羽(1)
2日目(23年5月4日)秋田〜津軽半島~三沢…花と緑と春風の北奥羽(2)

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